下肢静脈瘤の予防

下肢静脈瘤は静脈内にある弁にダメージが蓄積して、壊れてしまうことで発症します。弁への負担を軽減してあげることで下肢静脈瘤を予防することができます。また、すでに弁が壊れている場合も、進行を遅くすることができます。

日常生活で気を付けること

足の静脈弁への負担軽減には、血流を改善することが重要です。血流が改善して血液が心臓に戻りやすくなると、弁にかかる負担が軽減します。
足の血流改善には、ふくらはぎを動かすことが有効です。ふくらはぎは第2の心臓と言われており、重力に逆らって血液を心臓に戻すポンプのような役割を担っています。適度な運動でふくらはぎを十分動かすことで、静脈のうっ滞を防ぐことができます。特に足首を動かす運動は効果が高いため、立ち仕事やデスクワークで同じ姿勢を続ける時間が長い方はこまめに歩くことを心がけ、足首をしっかり動かすようにしましょう。

適度な運動

運動激しい運動は逆効果になることもあるので、あくまでも適度な運動を習慣づけてください。運動自体が足の血流を改善してくれますし、習慣的に行うことで筋力がつくと効果が高まります。やや速足のウォーキングによる散歩を習慣付け、仕事中も無理のない範囲でこまめに歩くよう心がけてください。お忙しくて散歩がなかなか実行できない場合には、通勤や通学で1駅歩くなどの工夫をしてみましょう。

バランスのとれた食事

野菜肥満や生活習慣病は血流に悪影響を与え、静脈への負担を増やしてしまいます。適切なカロリーに抑えたメニューを3食規則的にきちんととり、塩分や油分に気を付けてください。

立ち仕事やデスクワークで注意したいこと

販売員、美容師や理容師といった立ち仕事の方や、デスクワークで座ったまま大半の時間を過ごす方は、下肢静脈瘤になりやすいため、症状がまったくない時から予防法を実行することでリスクを低く抑えることができます。
じっとしていることが弁に対する負担を高めるので、こまめに歩くように心がけましょう。デスクワークで何度も立ち上がることが難しい方は、爪先や足首を動かすことで血流を改善してください。休憩時間には軽くストレッチをするか、足を上にした姿勢で休ませてください。また、毎日入浴して芯まで温まり、軽くマッサージするのも効果的です。

締め付けの強い下着は避ける

ガードルやベルト、サポーター、コルセットなど締め付ける力が強い衣類は、下半身の血流を阻害します。下肢静脈瘤の治療で弾性ストッキングを使うことはありますが、この圧は血流改善の効果を得られるように設計されており、医師の処方のもとで正しく着用してはじめて効果があるものです。

ハイヒールを避ける

ハイヒールかかとの高い靴で歩行した場合、ふくらはぎの筋肉はほとんど使われません。そのため速足で歩いても足の血流改善効果が見込めません。職業的にハイヒールを履く必要がある場合には、通勤時などにはスニーカーを履くなどして、ふくらはぎを使って歩く時間を日常生活に組み込んでください。

弾性ストッキング

弾性ストッキング医療用の弾性ストッキングは、圧迫によって静脈の拡張を防ぎ、血液を逆流しないように設計されており、医学的にその効果が実証されています。足首の圧力が高く、上に行くにしたがって圧が弱くなっていくため、圧力の高い部分から低い部分へと血液が導かれて血流が改善します。
下肢静脈瘤予防の他、むくみなどの症状を軽減して進行を遅くします。また再発予防にも高い効果があります。

弾性ストッキングの選び方

弾性ストッキングは正しい履き方をしないと効果が見込めず、血流がかえって悪化する可能性もあります。サイズが合っていることはもちろん重要ですが、ご自分にとって履きやすいかどうかも大切です。
また、日本人には圧迫に対して肌が弱い方が多いため、素材が皮膚に合うかどうかも確認したい選択肢です。耐久性や抗菌性のあるものが望ましく、夏場などは通気性にも注意が必要です。

サイズ

足首の一番細い部分と、ふくらはぎの一番太い部分のサイズをもとに選びます。両方に合わせることで効果が現れます。

圧力

足の状態により、必要な圧は変わってきます。軽度で15~20mmHg、中度で20~30mmHg、重度で30~40mmHgが目安ですが、通常は圧力がクラスごとにわかれたものから選びます。クラスには1~4があって大きな数字になるほど圧が高く、その他に予防のためのサポートクラスがあります。
医師に相談して、ご自分に合った圧のストッキングを選びましょう。

素材

皮膚が弱い方は、ゴム、シリコン、ラテックス、ナイロン、ポリウレタンなど、ご自分が苦手な素材が含まれていないかを確認してください。夏場には蒸れへの配慮も重要なポイントです。コットン素材で蒸れにくいものなども登場していますので、ご自分に合ったものを見つけてください。

皮膚が弱い方へ

弾性ストッキングをそのまま履くのではなく、皮膚に合うインナーソックスをまず履いて、その上から弾性ストッキングを履くことでトラブルを防げる場合もよくあります。

ただれや潰瘍などがある方へ

下肢静脈瘤が進行するとただれや潰瘍などの皮膚トラブルが頻繁に生じ、治りにくくなります。そうした際にはお手入れがしやすいファスナー付の弾性ストッキングもあります。

うまく履けない方へ

圧力が高いため、最初は特に着用に際して苦労されることが多くなっています。補助器具を使ったり、滑りの良い素材のインナーソックスを履いてから上に弾性ストッキングを重ねたりすることで、比較的簡単に着用が可能です。また、必要な圧のクラスより低いものを重ね履きして適切な圧を得ることもできます。うまく履けない時には早めに相談にいらしてください。

弾性ストッキングの使用ができないケース

弾性ストッキングの着用が禁忌になっている病気があります。血栓症、動脈硬化症、心臓に関する重度の疾患、そして感染症に罹っている際には、弾性ストッキングを使えません。特に血管内に血の塊がある場合、そこを強く押さえつける可能性がある弾性ストッキングの着用はとても危険です。また、ナイロンやラテックスのアレルギーがある方も弾性ストッキングの着用はおすすめできません。
こうした条件があるため、弾性ストッキングを着用する際には必ず医師に相談してください。

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